非結核性抗酸菌症(非定型抗酸菌症)
非結核性抗酸菌症(非定型抗酸菌症)
非定型抗酸菌
非結核性抗酸菌は以前には非定型抗酸菌と呼ばれており、結核菌やライ菌以外の抗酸菌の総称です。この菌は土壌や水系などの自然環境に広く存在していて、水道水のなかにもいます。
今、日本ではこの非結核性抗酸菌による感染症、非結核性抗酸菌症が増加しています。
日本で多い菌種は、ミコバクテリウム・アビウム、ミコバクテリウム・イントラセルラレの二つで、合わせて日本の非結核性抗酸菌症の7割以上を占めます。この二つの菌をまとめてMAC(マック)と称します。ついで多いのがミコバクテリウム・カンサシです。
症状
このMAC症には二つの病型があります。
圧倒的に多いのが、元来健康だった中高年の女性に発症する型です。無症状の中年女性が健康診断で気管支拡張や慢性気管支炎を指摘されたり、ときには、突然少量の血痰がでることがあります。肺の中で、中葉・舌区といわれる部位のたくさんの小さなツブツブ陰影と気管支拡張が初期の画像で、進行すると空洞や肺炎類似の陰影も加わります。
もう一つが空洞を伴う比較的大きな結節影が上葉にみられるタイプで、肺気腫やじん肺、以前の結核後遺症など肺に既存の病変をもつ男性に多くみられます。
診断
非結核性抗酸菌症の診断には、喀痰から2回ないし3回、反復して非結核性抗酸菌を検出することが必要です。非結核性抗酸菌のなかには、培地中で迅速に発育する菌もありますが、MACは発育が遅いので、喀痰検査から、数週間後にやっと「培養陽性」となって、非結核性抗酸菌がみつかることがあります。非結核性抗酸菌症が疑われるのに喀痰検査を繰り返しても菌が見つからないときには気管支鏡検査で調べると簡単に菌を発見できることがあります。
ヒトからヒトには伝染しません
非結核性抗酸菌は結核菌とは異なり、ヒトからヒトへは伝染しません。ですから、日常生活はふつうに暮らしてください。会社勤務や社交に制限はありませんし、旅行や宴会も大丈夫です。
治療
非結核性抗酸菌症の治療はまだ難しいところがあります。
まず、完全確実に効く薬がまだありません。ですから、若い患者さんが初期に発見されれば、外科手術で、病気の部分を切除するのが最も効果的な場合があります。しかし、2箇所以上の複数箇所や広い病変のある患者さんや高齢の患者には手術を勧められません。
完全確実に効く薬はないものの、現在は、クラリスロマイシン、リファンピシン、エサンブトールの三つの薬を、内服するのが標準的な治療で、加えて、ストレプトマイシンを週に3回注射することも効果的です。
治療の目標はまず、喀痰からの菌の消失です。残念ですが、高齢者や進行した患者さんでは、治療しても、菌が消失しないことがままあります。治療期間については、菌が喀痰から消失した後、少なくても1年間の内服が必要で、できればさらに続けるほうが良い、といわれています。