静岡県 袋井市 げんまクリニック 内科・呼吸器内科・アレルギー科

気管支喘息Ⅱ 喘息もいろいろ

気管支喘息Ⅱ 喘息もいろいろ

アルコール誘発喘息

 アルコールに弱いヒトが飲酒すると、15分くらいで、喘息を起こすことがあります。アルコールはアセトアルデヒドデハイドロゲネース(ALDH)という酵素で代謝されます。この酵素活性が低い遺伝子を持った喘息患者では、アルコールの分解がアセトアルデヒドから酢酸へ進まないので、血中アセトアルデヒド濃度が上昇して肥満細胞からヒスタミンが遊離し、気管支収縮などが起こって、喘息発作が誘発されます。
 予防は、抗ヒスタミン薬(アレロック、アレグラ、)の予防内服や、ヒスタミン遊離を防ぐ薬剤のインタール予防吸入が特に有効です。

月経関連喘息

 生理に一致して、喘息発作が起きる女性がいます。
 月経関連喘息には、通常の喘息治療のほかに、女性ホルモンのプロゲストロン内服が有効とされています。しかし、生理前に、体がむくみ、体重が著しく増える女性では、利尿剤が有効なことがあります。

花粉症喘息 

 スギ花粉は、サイズが30μmと大きいので、肺に吸い込まれにくく、このため気管支喘息を起こしにくいのです。しかし、スギ花粉表面の1μmほどの微粒子が剥がれて肺に吸入されると喘息がおきることがあります。イネ科の花粉でも、小児喘息がおこるといわれています。なお、お米になる稲の花粉は花粉症の原因にも喘息の原因にもなりません。

ペットアレルギーによる喘息

 気管支喘息の誘因となるペットは、毛の生えている動物が多く、犬・猫が代表でした。しかし、近年は、ハムスターが、もっとも危険なペットです。飼育開始から、アレルギー感作されるまでが短く、しかも、RAST法で検出されにくいため血液検査でアレルギーのスコアが低めに表現されるので、アレルゲンとして過小評価されがちです。
 成人の犬・猫アレルギーでは、他のアレルゲンにも感作されていることが多いのですが、ハムスターでは単独感作が多いといわれています。つまり、成人の犬・猫アレルギーでは、ペットを手放しても喘息が改善しないことが多いが、ハムスター喘息では、手放せば軽快が期待できるかもしれない、といわれているわけです。
 なお、インコ・オームなどの小鳥は、過敏性肺炎(アレルギー性肺炎)の原因になったり、クラミジア・ニューモニエという微生物の感染動物・保菌動物としてクラミジア肺炎を媒介することがありますが、喘息のアレルゲンになることは少ない。

運動誘発性喘息

 運動誘発性喘息は、ランニングなどの呼吸が激しくなる運動を始めると、ゼーゼーしたり、咳き込んだりする発作で、成人にも見られますが、喘息の子供ではありふれた発作です。運動開始後、5~10分で発作が始まり、30―45分で自然におさまることが多い。
 空気が冷たくて乾燥していると運動誘発性喘息がおきやすいので、秋から冬にかけて起こしやすい喘息発作です。逆に、暖かくて湿った空気では、おこしにくいので、昔から喘息の子供の運動としては、水泳が推奨されてきました。
 慢性喘息を背景に、運動誘発性喘息がおこるので、予防はまず、普段の喘息治療です。加えて、運動開始前に、サルタノールなどのβ2刺激薬を吸入するのが最も有効です。インタールの運動前の吸入や抗ロイコトルエン薬の定期内服も予防効果があります。

咳型喘息

 一般に、喘息はゼーゼー・ヒューヒューするものですが、しつこく頑固な咳の中には、喘息治療でビタッと治る咳があり、咳型喘息と言われています。
 吸入ステロイド剤や気管支拡張剤で咳発作が著しく改善すれば咳型喘息と診断されます。では、どんな咳で、咳喘息を疑うのか、咳喘息の特徴は、昼間より、夜中から朝方に多く、冷気や煙・匂いなどに反応して咳発作を起こしたり、長電話や、激しい作業で疲れると咳き込む、などの特徴があります。

胸痛型喘息

 喘息のなかには咳やゼーゼーヒューヒューとする喘鳴がなく、胸の痛みだけが症状の患者がいます。この痛みは喘息治療で改善します。

アスピリン喘息

 成人喘息患者のうち、約10%に、解熱鎮痛剤で、喘息発作が起こります。解熱鎮痛剤喘息、と言うべきですが、解熱鎮痛剤の代表的薬品の名を借りて、アスピリン喘息と呼ばれています。
 アスピリン喘息は女性にやや多く、成人してから気管支喘息を発症します。子供のころには、喘息がなかったかたがほとんどです。喘息を発症する1-2年前に、鼻炎が始まることが多く、慢性副鼻腔炎・鼻ポリープを高率に合併し、嗅覚の低下が特徴的です。
 アスピリン喘息患者ではいろいろな鎮痛解熱剤の内服・肛門挿入、時には貼付でも喘息発作がおきますが、アセトアミノフェン(カロナールなどの商品名)は、少ない量ではおこしにくいといわれています。ソランタールなどの塩基性解熱鎮痛剤は安全に使用できます。
 COX―2選択的阻害剤という種類の新しい解熱鎮痛剤であるセレコックスは、海外では、喘息発作を誘発しなかったことが報告されています。
 また、アスピリン喘息患者では、喘息発作の治療薬である、注射用ステロイドホルモン剤のうち、コハク酸エステルステロイドホルモン剤(商品名はソルコーテフ・ソルメドロール・サクシゾン)が喘息発作を悪化させることがあるので、要注意です。リン酸エステルステロイドホルモン剤(商品名はリンデロン・デカドロン・ハイドロコートン)は、ゆっくり点滴すれば安全です。
 アスピリン喘息の発症メカニズムは、解熱鎮痛剤が、COXという酵素を阻害するために、システイニルロイコトルエンが過剰産生され、この物質が気管支を収縮させ、好酸球というアレルギーに関係する白血球を呼び寄せたりして、喘息を悪化させると考えられています。このため、アスピリン喘息患者では、キプレスなどの抗ロイコトルエン薬が特に有効です。
 なお、解熱鎮痛剤で蕁麻疹や血管浮腫(まぶたや口唇、ハナやのどの粘膜のむくみ)がおきる患者さんもいます。アスピリン蕁麻疹とか解熱鎮痛剤不耐症蕁麻疹型と呼ばれています。

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