静岡県 袋井市 げんまクリニック 内科・呼吸器内科・アレルギー科

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームの診断基準は

 
 まず、おへその高さでの腹回り(腹囲)が、男性は85cm,女性では90cm以上あること、これ以上あると、内蔵脂肪が多いかもしれない、とみなす訳ですね。いわゆるウェストではなく、おへその高さで測定するので、ご注意ください。

 さらに、

  1. 中性脂肪が多い(中性脂肪 150mg/dl以上)、または、良いコレステロールが少ない(HDL-コレステロール40mg/dl未満)のすくなくともどちらかに該当、
  2. 収縮期血圧(上の血圧)が130mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が85mmHg以上のすくなくともどちらかに該当、
  3. 空腹時血糖値 110mg以上、

の3項目中2つ以上に該当すれば、メタボリックシンドロームという診断になります。

メタボリックシンドロームの概念は

 おなかの中の内臓の周囲に脂肪が蓄積して、「内臓脂肪型肥満」になり、その結果、高脂血症・高血圧・糖尿病を発症、その後、動脈硬化が進行して、心筋梗塞や脳梗塞を起こす、という筋書きです。「内臓脂肪」から、中性脂肪が血管中に入って高脂血症、「内臓脂肪」からアンギオテンシノーゲンやレプチンという血圧を上げる物質が分泌されて高血圧に、TNF-αやレジスチンというインスリンに抵抗する物質が分泌されて糖尿病になるわけです。
 つまり、メタボリックシンドロームは、「内臓脂肪」が多すぎて動脈硬化する病気、と理解してください。

メタボリックシンドロームの対策・治療

  1. まず、内臓脂肪を減らすこと。
    1. 食事でへらす。つまりダイエットですね。
      巷では、多くのダイエット方法がはやったり、すたれたりしています。最近の話題は、「低炭水化物食」で、別名をアトキンス・ダイエットといいます。米国のアトキンス博士の考案です。最初は、1日20g以下の超低炭水化物食から開始、その後は徐々に炭水化物を増やしますが、基本的にはコメ・パン・イモ類・菓子などは食べられないとお考え下さい。その代わり、蛋白・脂肪は無制限に食べられます。つまり、肉や魚やそのフライや揚げ物はいくら食べても良いのです。しかし、ご飯もおすしもケーキもそば・パスタも食べられないダイエットですので、日本でするのは難しいかもしれませんし、脂肪を主なエネルギー源とするために、特有の口臭・体臭がでることがあります。また、提唱者のアトキンス博士が肥満して転倒したことがきっかけで死亡したことも話題となりました。ただし、本当に実行できればかなり効果のあることが、権威ある医学雑誌(NEJM)の論文でも実証されています。
       普通の日本人におすすめの食事指導は簡単で、「朝・昼・晩の三食だけを、きちんとバランスよく、しっかりよく噛んで適量をたべる」、これだけです。具体的には、まず、朝食を抜かないことです。朝食を抜いているヒトが「内臓脂肪型肥満」になってるのは、夕食のドカ食いか、夜食をとってるか、どちらかのことが殆どです。夕食のドカ食いや夜食はカロリーが消費されず、脂肪として蓄積しやすいので、避けましょう。夕食のドカ食いや夜食をやめれば、朝に食欲が戻るので、朝食から、蛋白・野菜・炭水化物をバランスよく食べて下さい。ただし、脂身や揚げ物は、きわめて高カロリー(脂肪は1gあたり9カロリー、蛋白と炭水化物は1gあたり4カロリー)ですし、豚肉や牛肉・牛乳の脂肪は動脈硬化を促進する飽和脂肪酸が主体なので控えめにしましょう。つまり、三枚肉やベーコンは危険物、たまに召し上がるステーキは、サーロインやさしの入った和牛を避けて、輸入肉のフィレがメタボリックには安全です。夜食に豚骨ラーメンをスープまで味わってしまうと高カロリー・高飽和脂肪酸・高塩分ですから、かなり危険です。また、早食いをやめて、30回くらいよく噛んでゆっくり食べれば、少な目の食事でも満足感があります。最後に おやつのお菓子は、糖分や脂質が多く、高カロリーですから、ほどほどに。お酒は、少量なら、良いコレステロールを増加させるのでOKです。ただし、おつまみの塩分・カロリーにご注意。ピーナッツ・アーモンドは、ほとんど脂肪ですから、少量でも超高カロリーです。
    2. 運動で減らすのは、若返り効果もあって、良い方法です。ところが、運動すると食事が美味しくなり、ついつい食べ過ぎますから、食事治療と併用するのが賢いです。
       運動すれば、エネルギーが消費されるので、始めはグリコーゲンが、ついで脂肪が燃焼します。脂肪を燃やすには、ウオーキング・ジョギング・水泳などの有酸素運動(エアロビクス)がまず、おすすめです。勿論。ジムなどでのいわゆるエアロビクスやアクアビクスもOKです。有酸素運動は 1回20分以上、週に3回以上が望ましく、週に1回まとめて、60分以上しても効果が少ない。つまり、まとめ食いも、まとめ運動もダメ、食事も運動も小分けが良いということです。ただし、体調不良の日はサボることが、大事です。
       有酸素運動の激しさを運動強度といいますが、脂肪を燃やすためには、あまり激しい運動は、良くなく、ジョギングでいえば、おしゃべりできる程度の早さが勧められます。心拍数で言えば、最高心拍数(220-年齢)の60%が運動初心者にお勧めです。40歳なら、 108/分、60歳なら、 96/分です。運動のベテランなら、最高心拍数の80%までOKです。40歳だと、144/分、になりますが、これはかなり激しいですね。
       腹筋・背筋・ダンベル・ベンチプレスなどの筋トレは、直接に脂肪を燃やす効果はありません。しかし、筋肉は安静にしていても、カロリーを消費してくれます。体重が同じでも、筋肉が多ければ、安静時に燃えるカロリー(基礎代謝量といいます)が多いので、同じカロリーを食べていれば体重は減少する筈です。2kg筋肉が増えれば、1日の消費カロリーが50カロリーから100カロリー増える、といわれています。天乃屋の歌舞伎揚せんべい1枚分ですね。
       さらに筋トレは、成長ホルモンを増やし、アンチエイジングに役立ちます。筋トレの強さは翌日に筋肉痛が残るくらいが適当です。回数は、筋疲労が取れるまで休みが必要なので、3日または4日に1回で十分です。
  2. 動脈硬化のリスクを減らす。
     内臓脂肪が思ったほど減らなくても、大丈夫です。要は動脈硬化を防げば良いのです。動脈硬化をおこす5つの危険因子;タバコ・高血圧・糖尿病または高血糖・高LDLコレステロール・低HDLコレステロールを改善すれば、内臓脂肪が減らなくても、動脈硬化が防げます。
    1. タバコ
       タバコは動脈硬化を進めます。肺がんだけでなく、肝臓・膵臓・膀胱・子宮頚部など、一見、無関係に思われるガンも増やします。呼吸を苦しくさせ、喘息を起こし、さらに お顔のしわも増やします。
       禁煙は動脈硬化を防ぎます。飲む禁煙薬、『チャンピックス』は、処方箋が必要ですし、吐き気や夢などの副作用に注意が必要ですが、禁煙効果は優れています。
    2. 高血圧
       高血圧も動脈硬化を進めます。自分で測る血圧は135/80mmHgまでが正常、それ以上は高血圧です。
       味噌・しょうゆ・ラーメンや鍋物のスープなどの塩分を減らしましょう。有酸素運動も血圧を下げます。
       有酸素運動と塩分制限を実践しても、起床時の自宅血圧が収縮時140以上、または拡張期90以上のヒトは医師にご相談ください。
    3. 糖尿病または高血糖
       糖尿病で動脈硬化するのは勿論ですが、まだ糖尿病にまで至らない程度の軽い食後高血糖でも、血管内皮細胞を傷つけて動脈硬化を起こします。
       早めの診察と定期的な検査がお勧めです。
    4. 高LDLコレステロール
       LDL(低比重リポ蛋白)コレステロールが、活性酸素で酸化された『酸化LDLコレステロール』が、『悪いコレステロール』です。『酸化LDLコレステロール』がマクロファージに食べられて血管に蓄積して動脈硬化を起こします。
       女性では閉経すると、女性ホルモンのエストゲンが減少して、コレステロールが肝臓に取り込まれにくくなって、血液のコレステロールが増加します。
    5. 低HDLコレステロール
       HDLコレステロールは血管のコレステロールを除去します。『良いコレステロール』です。喫煙で低下します。有酸素運動と少量のお酒はHDLコレステロールを増加させます。
  3. 心配ばかりしないで、今日を楽しむこと
     いろいろ努力しても、なかなか、メタボが改善しないヒトがいます。まずは、話を聞いてくれて、あなたを理解してくれるドクターを探しましょう。つぎは、するべきことをしたら、あまりくよくよ悩まずに、前向きに日々の人生を楽しんでください。人生は、悩んで過ごすには短すぎます。ヒトは誕生の瞬間から、余命80年の末期患者だそうです。悩んでいるより『死ぬまで18歳』と考えたほうが楽しいと思いませんか?

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